陸上自衛隊イラク派遣部隊の皆さま、全員の無事のご帰還、おめでとうございます!
一発の銃弾を撃つこともなく、誰も傷つけず、誰も傷つかない2年半の任務完了。
あなたたちは真の武人です。ほんものの大和男子、大和撫子です。
一日本国民として心より敬意を表し、あなたたちを誇りに思います。
すでに用済みになったこのページですが、隊員の皆さまの偉業をたたえ、当面の間、おいておきます。
平成18年7月25日
私はここで、自衛隊イラク派遣の是非を論じる気持ちはありません。 さまざまな意見があり、それをそれぞれが自由に主張できることは民主主義国家日本の成熟を示すものと思います。 ただ、現に隊員が派遣されているという現実は、紛れもない事実です。 さまざまな政治上の主義主張とは無関係に、日本人ならば皆、今回のイラク復興支援派遣隊員の皆さんの任務完遂と無事帰還を祈っていることでしょう。 責任感と武士道を体現した彼らは必ずや現地住民の支持を受けて、任務は成功裏に達成されるものと確信しております。 派遣隊長の「GNN(義理人情浪花節)は世界共通と信じる」発言。あれは日本人にしか言えない台詞です。 感動しました。 ところで、いささか気になるのが、隊員の着用している迷彩服です。迷彩は個人の存在を消し去って身を守ろうとするものです。 正義と人道の復興支援に相応しいものとは思えません。第一、テロリストの攻撃は迷彩で防げるものとも考えられません。 むしろ「日本自衛隊ここにあり」の気概を示すことが、かえって安全につながるとすら言えるでしょう。 とは言っても他国部隊との関係もあり、日本隊だけが奇抜な服装というわけにもいかないでしょう。 機能性についても考慮しなければならないと思います。 さて、陸上自衛隊の迷彩パターンは、あくまでも日本の国土における迷彩効果を考えて制作されたものです。 砂漠のイラクでは何の迷彩効果もありません。欧米諸国の迷彩は砂漠パターンです。ですが日本の自衛隊は国土防衛専任ですから、砂漠での活動を想定しておらず、砂漠迷彩など存在するわけがなのです。 ですから今回について、自衛隊の迷彩にはカモフラージュ効果は無いといえるでしょう。むしろ他国隊の砂漠迷彩との違いを強調した、しかもイスラム圏では緑は神聖な色とされていることも考慮されたと聞いております。 そこで私はここで、無理を承知で提言したいと思います。 派遣隊の迷彩パターンに有職文様を取り入れていただきたい 「何をふざけたことを」「不謹慎だ」 とお叱りを受けるかもしれません。しかし・・・しかしです。 現在の迷彩がカモフラージュ効果ゼロと考えるならば、何も今のパターンにこだわる必要はないでしょう。 それならば同じような色彩であれば、優美な有職文様を採用しても良いのではないでしょうか。 これは有職文様を愛しているからだけで言っているのではないのです。 有職文様は、イラクと日本の千二百年の友好のシンボルなのです! このサイトを訪れた皆さまならば、有職文様がシルクロードを通って、今のイラク、かつてのペルシャ(下記注参照)から来た文様が源流となっていることはご存じでしょう。雲立涌を横に配置すれば、たちまち葡萄唐草文様に先祖帰りします。有職文様が日本的でありながら、どこかエキゾチックでインターナショナルを感じさせる文様であることは、皆さまもお感じになることでしょう。同じようにペルシャ文化の影響を受けたイスラムの幾何学文様に通じるものがありますね。そう、有職文様こそ、1200年以上前から日本がイラク(ペルシャ)と精神的つながりを持ち、文化を尊重して来たシンボルなのです。 このページの地模様は「輪無唐草」、表(テーブル)内の地模様は「轡唐草」、ともに代表的な有職文様であり、ペルシャ経由の文様たちです。 隊員の皆さんが現地の人たちから、この変わった迷彩模様について質問されたとき、 「これは1200年前に、お国から伝わった文様なのです。 日本はペルシャの文化を大切にし、愛し続け、1200年後の今も 日本の宮廷ではこの文様を使い続けているのです」 と胸を張って答えて欲しいと思います。 誇り高いイラクの人々はきっと喜んでくれることでしょう。 関係者の皆さま、ぜひ御一考ください! 私は「装束の知識と着方」ページの「はじめに」で、真の国際化とは、相互の文化を尊重し合うことだ、と申し上げました。 「誇り」とは、自らが他者よりも優れていると根拠無く主張する「傲慢」ではありません。 自国の文化を大切にし、他国の文化も同じように尊重する。そこに上下の関係はありません。 それこそが「誇り」だと私は考えております。 他国への配慮のあまり自国を卑下することは、相手からも第三者からも軽侮されるだけの行為と思います。 誇りを知る者は、傲慢な者を嫌うとともに、誇りの無い者を蔑むのです。 誇り高きイスラムの民には、誇り高き国民こそ信頼に足ると評価されるのです。 誇り高き国の誇り高き隊員の皆さまの異国でのご活躍、健康と安全を心から祈っております。 <注記> 日本に伝わった有職文様の発祥地は、ご存じのように3世紀に成立したササン朝ペルシャです。 この王朝はゾロアスター教を信奉し、現在のイラン・イラクを中心とした広大な版図と高度な文明を誇りましたが、7世紀にイスラムのアッバース朝(サラセン帝国)に飲み込まれてしまいました。しかしアラブ人はペルシャを征服したにも関わらず文化・政治制度の面では高度なササン朝方式を継承せざるを得ず、ペルシャ文化は後年まで受け継がれました。 このペルシャ文化の直系の継承者は、言語(ペルシャ語)や文化の特徴などからイランであるとも考えられますが、ササン朝ペルシャの都がバグダッド近郊のクテシフォンであったことや、イスラム文化への色濃い影響を考えて、イラクもまたペルシャ文化継承者の一つと考えて差し支えないと私は考えています。
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