HOME綺陽堂>有職文・丸紋系

有職文様素材集1ー1 (有職文・丸文系)

有職文様の代表的存在                表紙へ


浮線綾1 浮線綾2 浮線綾3 浮線綾4
浮線綾5 浮線綾6 古代浮線綾1 古代浮線綾2
菊の丸1 菊の丸2 菊の丸3 菊の丸4
鴛鴦丸1 鴛鴦丸2 鴛鴦丸3 鴛鴦丸4
八藤丸1 八藤丸2 八藤丸3 八藤丸4
かに霰1 かに霰2 か中八曜菊1 か中八曜菊2
鳳凰丸 八藤菱1 八藤菱2 八藤菱3
向花丸1 向花丸2 向花丸3 四葉葵唐花丸1
伏見宮臥菊丸1 伏見宮臥菊丸2 唐花丸 藤葵葉唐花
蛮絵梅1 蛮絵梅2 蛮絵鸚鵡1 蛮絵鸚鵡2
瑞草蝶丸 唐松鶴丸 正親町三条家八藤 梅花

解説

ここでは平安時代以降、装束などに用いられた丸紋をモチーフにしています。

「浮線綾」(ふせんりょう)
本来織り方の名前でしたが、その織物の文様に多く用いられた「臥せ蝶丸紋」も「浮線綾」と呼ばれるようになりました。直衣と言う上級公卿の日常着の冬物や、よりカジュアルな装束である狩衣の文様として多用されました。
「古代浮線綾」(こだいふせんりょう)
室町時代前期、熊野速玉大社に奉納された袿(女性用の上着)に見られる「臥せ蝶丸紋」文様で、古代の趣を残しています。
「鴛鴦丸」(おしどりのまる)
おしどりは図柄も良く、また夫婦仲の良い鳥として有名であるため、さまざまな装束に多用された文様です。この向かい鴛鴦は画面ではよくわかりませんが、上が雌、下が雄と描かれ分けられています。
「八藤丸」(やつふじのまる)
「指貫(さしぬき)」と呼ばれるゆったりとした袴の文様として代表的なものです。現代の神主さんの上級者もこの文様の袴をはいています。同じ八藤でも家々で微妙な差異があります。ここでは一般的な八藤丸の他、近衛家、および正親町三条(おうぎまちさんじょう・明治に嵯峨と改姓)家で用いられたものをご紹介しています。正親町三条家のものは、藤が細かくなく、蝶が4羽飛んでいる特殊なものです。
「かに霰」(かにあられ)
「か紋」を「あられ紋(市松模様)」の上に配した文様で、男子束帯の「表袴(うえのはかま)」と呼ばれるズボンに用いられました。名称から「カニ(蟹)」と勘違いされたり、「か紋」を「かにあられ」と思っている人も多いようです。「か」は穴かんむりに果と書く漢字で、第2水準にはありませんので混乱します。この「か」は瓜の輪切りとも言われていますが、さまざまな説があります。御簾(室内外を仕切るスダレ)の上部にある布部分「帽額(もこう)」にこの図柄が多く、この「もこう」に「木瓜」という字をあて、それを「きゅうり」と読んで、瓜輪切り説が出たというのです。しかし瓜説も根強く、正確にはわかりません。
「八藤菱」(やつふじのひし)
やはり江戸時代から近代に女房装束の袿によく用いられました。これ単独の使用はもちろん、他の紋(鳥の柄や家紋をモチーフにしたもの)と組み合わせた「比翼紋(ひよくもん)」としても使われました。明治以降の袿はたいてい比翼紋です。
「伏見宮臥菊丸」(ふしみのみやふせきくのまる)
伏見宮家で指貫の文様に用いられました。親王の指貫は「雲立涌(くもたてわく)」の文様が多いのですが、江戸時代にはこうした家々の文様も自由に用いられたようです。
「蛮絵梅」(ばんえのうめ)「蛮絵鸚鵡」(ばんえのおうむ)
「蛮絵」とは異国風の絵と言う意味であるとか、丸形(盤絵)のことであるとか、様々な説がありますが、確かに異国風のダイナミックでエキゾチックな文様が多いようです。高貴な人の警護に当たる随身が着用した装束に見られ、左近衛の「獅子」、右近衛の「熊」の蛮絵の褐衣(かちえ)が有名です。これらの絵は麻の布地に木版で摺り染めをされたものです。
 なお、褐衣を「褐色の衣」と勘違いされる方もいますが、「褐」とは毛織物のことで、古代中国で用いられていた随身装束の布地です。しかし日本の場合は毛織物の入手が困難であったために、麻を用いました。
 ここでは獅子の他、梅とオウムをモチーフにした蛮絵をご紹介します。梅は中国原産です。またオウムはニューギニア方面が原産地ですが、言葉をしゃべる霊鳥として古くから輸入されており、多くの有職文様に登場します。この「蛮絵鸚鵡」は古い図柄を生かした徳川将軍家の小直衣に見られるものです。




織分(おりわけ)

装束は洋服と違って、肩に縫い目が無く、一枚のつながった反物で前後の身を作ります。
ですから、上下のある文様の場合、前身はよくても後身は天地あべこべになってしまいます。
たとえば上記では「桐竹の丸」などがそれです。
そこで、肩のライン「肩堺(かたざかい)」から文様の上下の向きを逆にした織り方をすることがあります。
これを「織り分け」と言います。手間がかかるので高価ですから、こうした天地の明確な文様は、ぜいたくな織物、
つまり高位の者が用いた、と言うことが判り、文様も格が高いと言えます。