装束を彩る有職の色はとても優美です。
しかし平安時代の実際の布が残っておらず、また古い布地や絵巻物は染料・顔料が退色していますので、参考になりません。ここでは、想定しうる古い染色法で草木染めした近年の染色見本の数々で色彩を再現してみました。同じ原料を用いても条件によりまったく異なる色彩を呈するのが天然染色ですので、あくまでも目安として考えてください。
なお、Windws+IEでのみ色彩確認しています。Macでは正確に再現されません。
参考:故実叢書「織文図譜」色目見本
装束織文図会
草木染日本色名事典 (山崎青樹・美術出版社)
草木染日本の色百二十色 (山崎青樹・美術出版社)
譜説日本傳統色彩考 (長崎盛輝著・京都書院)
平安王朝襲色目 (河田満智子監修・三喜工芸)
日本の色辞典 (吉岡幸雄・紫紅社) ほか
※延喜式における染料は綾一疋あたりの分量です。媒染剤等についてはここでは記載しません。
赤系
色目 | 16進 | 名称 | 摘要 | 有職文献 | 古典文学 | 延喜式 |
#FCBEBF | 一斤染 いっこんぞめ |
絹一疋を紅 一斤で染める |
餝抄 | 源氏(末摘花) | ||
#F8C8BC | 退紅 あらぞめ/たいこう |
親王家の 仕丁雑色 |
西三条 装束抄 |
古今著聞集 | 紅花8両 | |
#C63372 | 今様色 いまよういろ |
流行色の意 諸説あり |
胡曹抄 | 源氏(玉鬘) 宇津保(蔵開上) |
||
#E7B4C2 | 薄紅梅 淡く うすきこうばいあわく |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
|||
#BD7591 | 薄紅梅 うすきこうばい |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
源氏(竹河) | ||
#D25376 | 紅梅 こうばい |
満佐須計 装束抄 |
源氏(若菜下・浮舟) 枕草子(278) |
|||
#AC2D50 | 濃紅梅 こきこうばい |
今様色と 同色か? |
西三条装束抄 | 源氏(玉鬘) | ||
#E4052D | 唐紅花 からくれない |
餝抄 | 古今和歌集 (秋下) |
紅花10斤 | ||
#FA8B94 | 薄紅 淡く うすきくれないあわく |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
|||
#F74F5B | 薄紅 うすきくれない |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
|||
#EF0C1D | 紅 くれない/べに |
衣服令 女子制服 |
源氏(夕顔) 枕草子(193) |
紅花1斤4両 | ||
#E12A26 | 赤朱 あかくす |
とりがわ の沓に塗る |
満佐須計 装束抄 |
懐風藻 (大友皇子伝) |
||
#E54D36 | 浅緋/朱ふつ あさきひ |
摂関期まで 五位 |
西三条装束抄 | 茜30斤 | ||
#EA0000 | 中緋 なかひ |
政事要略 | 落窪(3) 大鏡(5) |
|||
#A50024 | 深緋 ふかきひ |
四位のち五位 の当色 |
西三条装束抄 | 今鏡 (腹々の御子) |
茜40斤 紫草30斤 |
|
#C82A20 | 赤 あか |
禁色 上皇の袍色 |
餝抄 河海抄 |
枕草子(278) 宇津保物語(嵯峨院) |
||
#D56871 | 浅蘇芳 淡く あさきすおうあわく |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
|||
C53843 | 浅蘇芳 あさきすおう |
襲色目に 多用 |
餝抄 | 源氏(若菜下) | 蘇芳5両 | |
#990000 | 中蘇芳 すおう |
六位以下の 使用禁止 |
満佐須計 装束抄 |
源氏(藤裏葉) 落窪(4)堤中納言 |
蘇芳8両 | |
#6F0000 | 深蘇芳 ふかきすおう |
濃蘇芳とも | 西三条装束抄 | 枕草子(35) 紫式部日記 |
蘇芳1斤 | |
#CD676F | 浅葡萄 あさきえび |
天武朝 進位当色 |
日本書紀 | |||
#A53841 | 中葡萄 なかえび |
平安期 下襲に多用か |
西三条装束抄 | 源氏(花宴)(行幸) 枕草子(30・83) |
紫草3斤 | |
#793138 | 濃葡萄 こきえび |
天武朝 追位当色 |
日本書紀 |
橙色系
色目 | 16進 | 名称 | 摘要 | 有職文献 | 古典文学 | 延喜式 |
#E49A68 | 赤朽葉 あかきくちば |
襲色目に 多用 |
満佐須計 三条西装束抄 |
源氏(少女) 蜻蛉日記(上) |
||
#F39250 | 淡赤 (経紅緯黄) うすきあか |
織り色 | 満佐須計 装束抄 |
|||
#DE6250 | 赤白橡 あかしらつるばみ |
上皇の袍色 赤と同色とも |
諸本に多し | 源氏(少女・若菜下) | 黄櫨90斤 茜7斤 |
|
#FEB75E | 萱草色 かんぞういろ |
忌色 凶事の女袴色 |
西三条装束抄 河海抄 |
源氏(葵・幻) | ||
#E2A96F | 柑子色 こうじいろ |
忌色 萱草同色説有 |
凶服部類 禁中方名目抄 |
玉葉集 十訓抄 |
||
#EC7650 | 朱華 はねず |
天武朝 皇族袍色 |
日本書紀 | 万葉集(657)他 奈良時代に多い |
||
#FF8000 | 黄丹 おうに/おうだん |
禁色 東宮の袍色 |
衣服令 諸本に多し |
紅花10斤 支子1斗2升 |
黄・茶系
色目 | 16進 | 名称 | 摘要 | 有職文献 | 古典文学 | 延喜式 |
#FEF9DE | 練色 ねりいろ |
精錬した 絹糸の色 |
枕草子(268) 堤中納言(虫めづる) |
|||
#FEEFC4 | 鳥の子色 とりのこいろ |
卵の殻の 色を言う |
||||
#F0A800 | 浅支子 あさきくちなし |
源氏(玉鬘) | 支子2升 紅花3両 |
|||
#EE9702 | 深支子 ふかきくちなし |
黄丹に似て 禁色扱い |
弾正式 | 紫式部日記 多武峯少将物語 |
紅花12両 支子1斗 |
|
#F5D36B | 薄山吹 うすきやまぶき |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
|||
#F2C539 | 山吹 やまぶき |
満佐須計 装束抄 |
源氏(若紫・紅葉賀) 紫式部日記 |
|||
#DDAA0F | 濃山吹 こきやまぶき |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
|||
#F8D376 | 薄朽葉 うすきくちば |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
堤中納言(貝あはせ) | ||
#F6C64F | 朽葉 くちば |
落ち葉の色 | 延喜式 中宮御服 |
源氏(野分)落窪 堤中納言(貝あはせ) |
||
#E7EA75 | 浅黄 あさきき |
無品親王の 袍色 |
餝抄 | 刈安草3斤 | ||
#FBFF44 | 中黄 なかき |
源氏(夕顔・蜻蛉) 宇津保(吹上上) |
||||
#D4D900 | 深黄 ふかきき |
刈安草5斤 | ||||
#E6F939 | 女郎花色 おみなえしいろ |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
落窪(3) 源氏(東屋) |
||
#A88100 | 黄櫨染 こうろぜん |
禁色 天皇の袍色 |
諸本に多し | 櫨14斤 蘇芳11斤 |
||
#DCB371 | 香染 こうぞめ |
舎人の服 僧・尼の用 |
衛府官装束抄 | 枕草子(36) 栄華物語(初花) |
||
#C08A30 | 濃香/丁子色? こきこう/ちょうじいろ |
焦香とも こがれこう |
西三条装束抄 | 源氏(藤裏葉) 浜松中納言物語 |
||
#604837 | 橡 つるばみ |
橡はドングリ のこと |
衣服令 | 万葉集(4109) | 搗橡2斗5升 茜2斤 |
|
#64392F | 落栗色 おちぐりいろ |
源氏男女 装束抄 |
源氏(行幸) 宇津保物語 |
|||
#6A1104 | 檜皮色 ひわだいろ |
衛府官装束抄 | 源氏(手習・真木柱) |
緑系
色目 | 16進 | 名称 | 摘要 | 有職文献 | 古典文学 | 延喜式 |
#B6E0CC | 秘色 ひそく |
青磁の色 | 胡曹抄 | 源氏(末摘花) | ||
#8CD75B | 薄萌黄 淡く うすきもえぎあわく |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
|||
#66BA2E | 薄萌黄 うすきもえぎ |
苗色とも | 三条西装束抄 助無智秘抄 |
|||
#519324 | 中萌黄 なかもえぎ |
満佐須 装束抄 |
源氏(若菜下) 枕草子(104) |
|||
#39681A | 濃萌黄 こきもえぎ |
満佐須計 装束抄 |
||||
#78893D | 青朽葉 あおくちば |
西三条装束抄 | 源氏(夕霧)宇津保 夜半の寝覚 |
|||
#7ABA84 | 浅緑 あさみどり |
摂関期まで 七位当色 |
続日本紀 | 源氏物語(若菜下) | 藍1圍 黄檗9両 |
|
#00995D | 中緑 なかみどり |
源氏(乙女) 栄華物語(36) |
藍6圍 黄檗2斤 |
|||
#006248 | 深緑 ふかきみどり |
摂関期まで 六位当色 |
藍10圍 刈安草3斤 |
|||
#719337 | 薄青 うすきあお |
満佐須計 装束抄 |
||||
#465B22 | 青色 あおいろ |
禁色 天皇の袍色 |
餝抄 諸本に多し |
枕草子(5・76他) 源氏(行幸・澪標) |
||
#779458 | 青白橡 あおしらつるばみ |
禁色 青色同色説有 |
源氏(藤裏葉) 栄華物語(8) |
刈安草96斤 紫草6斤 |
||
#49563D | 青鈍 あおにび |
忌色 僧・尼の用 |
三条西装束抄 凶服部類 |
源氏(須磨・玉鬘) 宇津保(蔵開上) |
||
#45A780 | 青浅緑 あおあさきみどり |
藍半圍 黄檗8両 |
||||
#337B5F | 緑青 ろくしょう |
今昔物語(27) 右京太夫集 |
藍4圍 黄檗2斤 |
|||
#57AE7C | 淡木賊 あわきとくさ |
|||||
#40865E | 木賊色 とくさいろ |
満佐須計 装束抄 |
宇治拾遺物語 平家物語(1) |
青系
色目 | 16進 | 名称 | 摘要 | 有職文献 | 古典文学 | 延喜式 |
#ACF9D5 | 浅葱 あさぎ |
浅黄と混同 されやすい |
源氏(少女) 枕草子(35)狭衣物語 |
|||
#8EADC6 | 浅縹 あさきはなだ |
摂関期まで 初位当色 |
西三条装束抄 | 源氏(玉鬘) | 藍1圍 | |
#618BAD | 次縹 つぐはなだ |
藍4圍 | ||||
#3F729F | 縹・中縹 はなだ・なかはなだ |
藍のみで 染めた色 |
諸本に多し | 源氏(紅葉賀・ 須磨・藤裏葉) |
藍7圍 | |
#274765 | 深縹 ふかきはなだ |
八位当色 のち六位以下 |
藍10圍 | |||
#342C77 | 瑠璃色 るりいろ |
なつむし色 とも? |
餝抄 西三条装束抄 |
枕草子(281) | ||
#562880 | 紫苑色 しおんいろ |
襲色目に 多用 |
餝抄 九月九日以降 |
源氏(須磨) 落窪(1)狭衣(3) |
||
#4FD080 | 白藍 しろきあい |
藍半圍 黄檗7両 |
||||
#3F8D66 | 浅藍 あさきあい |
藍半圍 黄檗8両 |
||||
#104364 | 中藍 なかあい |
藍に黄色を 加えた色合い |
枕草子(72) | 藍1圍小半 黄檗14両 |
||
#2F4A3C | 深藍 ふかきあい |
本来は山藍 摺り染色? |
藻塩草 | 藍1圍 黄檗14両 |
||
#38215A | 紺色 こんいろ |
日本書紀では 深藍と同色? |
源氏(若菜下) 落窪(3) |
|||
#00005B | 褐色 かちいろ |
延喜弾正式 | 宇津保(祭の使) |
紫系
色目 | 16進 | 名称 | 摘要 | 有職文献 | 古典文学 | 延喜式 |
#BA93BE | 薄色 うすいろ |
源氏(夕顔) 枕草子(42) |
||||
#A082B1 | 半色 はしたいろ |
二藍の次の 夏直衣 |
桃華蘂葉 | |||
#7C5A95 | 二藍 ふたあい |
若年者の 夏直衣 |
西三条装束抄 | 源氏(藤裏葉) 枕草子(35) 落窪 |
||
#644A79 | 濃二藍 こきふたあい |
落窪物語(2) | ||||
#B86DA9 | 浅滅紫 あさきけしむらさき |
染液を熱して 黒み強化 |
紫草1斤 | |||
#723867 | 深滅紫 ふかきけしむらさき |
染液を熱して 黒み強化 |
延喜弾正式 | 紫草8斤 | ||
#C57E9f | 薄紫 淡く うすきむらさきあわく |
襲色目に 多用 |
満佐須計 装束抄 |
|||
#A34773 | 薄紫 うすきむらさき |
摂関期まで 二三位当色 |
古今著聞集(11・409) | 紫草5斤 | ||
#721C65 | 中紫 なかむらさき |
古代より 最高色 |
諸本に多し | 源氏 (紅葉賀・真木柱) |
||
#55154B | 深紫 こきむらさき |
摂関期まで 一位当色 |
源氏(桐壺) 栄華物語(8) |
紫草30斤 | ||
#581635 | 濃色 こきいろ |
未婚者の女袴 濃蘇芳と同色? |
西三条装束抄 |
白黒系
色目 | 16進 | 名称 | 摘要 | 有職文献 | 古典文学 | 延喜式 |
#F9FBED | 白 しろ |
古代は最高 高貴色扱い |
諸本に多し | 堤中納言物語 (虫めづる姫君) |
||
#F1F3F3 | 白瑩 しろみがき |
絹布をヘラで みがいたもの |
雁衣抄 | |||
#A4B0A8 | 薄鈍色 うすきにびいろ |
忌色 僧・尼の用 |
源氏(藤袴)宇津保 枕草子(83・161) |
|||
#676965 | 鈍色 にびいろ |
忌色 僧・尼の用 |
九暦 (天歴8.4.15) |
源氏(葵・若紫) 栄華物語(34) |
||
#271D1B | 黒橡 くろつるばみ |
忌色 | 諸本に多し | 源氏(夕霧) 宇津保(国譲中) |
||
#7A7E69 | 薄墨色/鼠色 うすきすみいろ |
忌色 | 貞丈雑記 凶服部類 |
枕草子(278) 源氏(葵・御法) |
||
#383A32 | 墨染 すみぞめ |
僧・尼の用 | 源氏(幻) | |||
#1B1617 | 黒 くろ |
摂関期以降 四位以上当色 |
諸本に多し | 宇津保(藤原の君) |
色で「中・・・」が付くのが正色です。「中紫」がいわゆる「紫」のことです。
古代、「青」はブルーとグリーン両方を示す色で、区分は曖昧であったようですが、おおむねグリーン系の色であったと考えられています。
藍色は今のような濃いブルーではなく、黄色みがある青緑色です。これは「藍色」が本来は生葉の摺り色を指したからと言われます。今で言う藍色は、当時は「縹(はなだ)」と呼びました。
律令では「深・浅(ふかきあさき)」と称された濃淡が、平安時代に「濃・淡(こきあわき)」と呼ばれるようになったようです。
参考:式内染鑑 徳川吉宗が古代の色を再興する目的で制作した色見本
満佐須計装束抄 | 源雅亮 | 平安時代(末) |
餝抄 | 土御門通方 | 鎌倉時代 |
布衣記 | 斎藤助成 | 鎌倉時代 |
雁衣抄 | 著者不詳 | 鎌倉時代 |
物具装束抄 | 中山 忠定 | 室町時代 |
西三条装束抄 | 三条西実隆 | 室町時代 |
桃華蘂葉 | 一條兼良 | 室町時代 |
女官餝抄 | 一條兼良 | 室町時代 |
源氏男女装束抄 | 月村斎宗碩 | 室町時代 |
胡曹抄 | 一條兼良 | 室町時代 |
服飾管見 | 田安宗武 | 江戸時代 |
色目秘抄 | 左京大夫康実 | 江戸時代 |
四季色目 | 梨陰散人 | 江戸時代 |
薄様色目 | 中村惟徳 | 江戸時代 |
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