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有職の「かさね色目」

かさね色目には3種類の意味があります。

1.表裏のかさね色目(合わせ色目)(重色目)
2.重ね着のかさね色目(襲色目)
3.織物のかさね色目(織り色目)
  経糸緯糸に違う色を使うことで複雑な色合いを作り出します。

装束の色彩は、これら3種の色目の混合体なのです。

数多くの新案かさね色目が生まれていますので、ここでは江戸時代以前の文献に登場する組み合わせのみご紹介しましょう。また、時代、公家の家流で同じ色目でも名称が変わったり、逆に名称は同じでも色目が異なったりします(最下欄に例示)。ここで紹介した名称と組み合わせは、ほんの一例であるとご承知おき下さい。


1.合わせ色目

春夏秋冬のシーズン色と雑(四季通用)があります。

平安の絹地質を考慮して全色について透過率3%としています。
特に白、夏の全色については「生絹(すずし)」であると想定して10%の透過処理を施しました。

春の色
名称 色目 摘  要 出典

うめ
  蘇芳  五節日から二月まで
 年少者
物具装束抄
梅重
うめがさね
  濃紅 紅梅  十一月より二月まで 薄様色目
裏梅
うらうめ
  紅梅  十一月より二月まで 薄様色目
つぼみ梅
つぼみうめ 
  紅梅 濃蘇芳  祝いに。年少人
 正月十五日まで 
四季色目
紅梅匂
こうばいにおい
  紅梅 薄紅梅  冬春 女官餝抄
若草
わかくさ
  淡青 濃青  正月、二月初 薄様色目
萌黄
もえぎ
  萌黄 女郎花  春冬
 多くは若年着用
装束抄

やなぎ
  淡青  冬より春 装束抄
黄柳
きやなぎ
  淡黄 淡青  冬春 四季色目
青柳
あおやなぎ
  淡青  春
 諸説多し
山科家説色目

さくら
   冬春 
 色目に諸説多し
胡曹抄
樺桜
かばざくら
  蘇芳  春
 中年以後は用いず
装束抄
桜萌黄
さくらもえぎ
  萌黄 濃二藍  春
 年少から壮年まで
物具装束抄

すみれ
  淡紫  春、二月三月 薄様色目
壺菫
つぼすみれ
  淡青  春、或いは二月 薄様色目

もも
  淡紅 萌黄  春、三月 色目秘抄
早蕨
さわらび
   春、三月
 名ばかりか?
薄様色目
胡曹抄
躑躅
つつじ
  蘇芳 萌黄  冬より春
 三十歳まで
色目秘抄
紅躑躅
くれないつつじ
  蘇芳 薄紅  春、二月三月 女官餝抄
白躑躅
しろつつじ
   春、二月三月 薄様色目
羊躑躅
もちつつじ
  薄色 濃蘇芳  春 桃華蘂葉
花山吹
はなやまぶき
  浅紅  春
 若人
物具装束抄
裏山吹
うらやまぶき
  萌黄  春
 年少
物具装束抄
青山吹
あおやまぶき
   春 桃華蘂葉

ふじ
  薄色 萌黄  三月から四月 服飾管見
牡丹
ぼたん
  淡蘇芳  春、三月四月 薄様色目 


夏の色
名称 色目 摘  要 出典
卯花
うのはな
   四月から五月 物具装束抄
鶏冠木
かえで
   夏 四月 雁衣抄
若鶏冠木
わかかえで 
  淡青  夏 装束抄
杜若
かきつばた
  二藍 萌黄  五月 物具装束抄
菖蒲
しょうぶ
  紅梅  四月から五月 桃華蘂葉
若菖蒲
わかしょうぶ
  淡紅  夏 薄様色目

あおい
  薄青 薄紫  夏 桃華蘂葉
花(盧)橘
はなたちばな
  朽葉  四月から五月 物具装束抄

おうち
  薄色  四月から五月 物具装束抄

よもぎ
  淡萌黄 濃萌黄  夏 胡曹抄
百合
ゆり
  朽葉  夏
 近年(室町期)用いず
桃華蘂葉
胡曹抄
苗色
なえいろ
  淡青  夏
 近年(室町期)用いず
薄様色目
若苗
わかなえ
  淡木賊 淡木賊  夏 藻塩草
薔薇
そうび
   夏
 長春バラの色
薄様色目
撫子
なでしこ
  薄蘇芳  四五月、或いは六月も
 色目に諸説多し 
物具装束抄
蝉の羽
せみのは
  檜皮色  夏 薄様色目
青唐紙
あおからかみ
   夏 山科家説色目
桔梗
ききょう
  二藍  五月から六月 物具装束抄 


秋の色
名称 色目 摘  要 出典
女郎花
おみなえし
  青×黄  六月から八月(九月) 物具装束抄

はぎ
  薄紫  六月から八月(九月) 物具装束抄
萩重
はぎがさね
  二藍  秋 薄様色目
花薄
はなすす
   秋初 色目秘抄
紫苑
しおん
  薄色  六月から九月 物具装束抄
紅葉
もみじ
  濃赤  秋 雁衣抄
初紅葉
はつもみじ
  萌黄 薄萌黄  秋 薄様色目
黄紅葉
きもみじ
  萌黄  九月から五節日 物具装束抄
青紅葉
あおもみじ
  朽葉  九月から五節日 雁衣抄
櫨紅葉
はじもみじ
  蘇芳  九月から十一月 四季色目
朽葉
くちば
  濃紅 濃黄  秋 薄様色目
赤朽葉
あかくちば
  紅×黄  秋深くなっては着ず 四季色目
小栗色
こぐりいろ 
  秘色 淡青  秋
 老者五位之を着る 
満佐須計装束抄
落栗色
おちぐりいろ
  蘇芳  秋 薄様色目

おぎ
  蘇芳  秋 西三条装束抄

まゆみ
  蘇芳 萌黄  秋 薄様色目
槿
あさがお
   秋 桃華蘂葉

しのぶ
  淡萌黄 蘇芳  秋 色目秘抄

はじ
  朽葉  秋九月より十一月まで  四季色目

きく
   八月から冬至 物具装束抄
蘇芳菊
すおうのきく
  濃蘇芳  秋 薄様色目
九月菊
くがつぎく
   九月 色目秘抄
黄菊
きぎく
   九月から五節 物具装束抄
紅菊
くれないぎく
   秋
 中倍は淡青
薄様色目
移菊
うつろいぎく
  薄紫  十月から五節 物具装束抄
つぼみ菊
つぼみぎく
   秋 薄様色目
残菊
のこりぎく
   秋 四季色目
葉菊
はぎく
  紺青  九月より五節 四季色目
竜胆
りんどう
  蘇芳  九月から五節 物具装束抄 


冬の色
名称 色目 摘  要 出典
虫青
むしあお
  二藍  秋から冬 
 四季通用説(山科流)有り 
雁衣抄
枯色
かれいろ
   十月から翌年三月 物具装束抄

こけ
  濃香 二藍  冬 装束抄

こおり
  白瑩  砧やヘラで磨き光沢を出す 
 瑩(みがき)と呼ぶ
雁衣抄
氷重
こおりがさね
  鳥ノ子  白
 詳細不明
四季色目
雪の下
ゆきのした
  紅梅  冬より春 薄様色目
椿
つばき
  蘇芳  五節より春 胡曹抄  


雑・四季通用の色
名称 色目 摘  要 出典
松重
まつがさね
   十五歳以上とも  
 老人用いず   諸説多し 
雁衣抄
脂燭
しそく
   四季(秋とする説有り) 桃華蘂葉

こう
  香色 香色  老人は裏白 物具装束抄
苦色
にがいろ
  二藍  十歳より二十歳
 祝儀には用いず 
四季色目
胡桃色
くるみいろ 
   四季 四季色目
蘇芳香
すおうこう
  蘇芳  四季 色目秘抄
秘色
ひそく
  瑠璃色 淡青  四季 四季色目
花田
はなだ
   老人は裏白 物具装束抄
今様色
いまよういろ
  紅梅 濃紅梅  四季 四季色目
赤色
あかいろ
  二藍  年少用 物具装束抄
葡萄染
えびぞめ
  蘇芳  四季 桃華蘂葉
檜皮色
ひわだいろ
  蘇芳 二藍  四季 
 表裏紫など諸説多し
雁衣抄
海松色
みるいろ
  萌黄  老人は裏白 
 表青黒など諸説あり
四季色目
木賊
とくさ
  萌黄  四季 布衣記
黒木賊
くろとくさ
  青黒味  四季
 祝儀に用いず
四季色目

<出典文献>

満佐須計装束抄    源雅亮      平安時代(末)
餝抄  久我通方  鎌倉時代
布衣記  斎藤助成  鎌倉時代
雁衣抄  著者不詳  鎌倉時代
物具装束抄  中山 忠定  室町時代
装束抄  三条西実隆  室町時代
桃華蘂葉  一條兼良  室町時代
女官餝抄  一條兼良  室町時代
源氏男女装束抄  月村斎宗碩   室町時代
藻塩草  月村斎宗碩  室町時代
胡曹抄  関白藤原房通  室町時代
服飾管見  田安宗武  江戸時代
色目秘抄  左京大夫康実  江戸時代
四季色目  梨陰散人  江戸時代
薄様色目  中村惟徳  江戸時代

2.重ね着の「襲ね色目」

別ページをご覧下さい。


3.織り色

経(たて)糸、緯(ぬき=よこ)糸の組み合わせで複雑な色合いの布地が出来ます。
光によって様々な色の変化を見せる色調が魅力の織物です。

名称  ・ 名称  ・ 名称  ・ 名称
濃色 濃紫 濃蘇芳 薄色 半色 薄紫 薄紫 当色 薄紫 薄紫
葡萄染 紙燭色 赤白橡 蘇芳
紅梅 玉虫色 緯白 秘色 薄色
赤色 香色 薄香 濃香 濃香 濃香
松重 蘇芳 萌黄 水色
花橘 栗色 女郎花 萌黄 麹塵
朽葉 赤朽葉 洗黄 黄朽葉 朽葉 青朽葉
花葉色 山吹 廬橘 薄紅 蘇芳 二藍
唐紙 黄唐紙 青唐紙 縹唐紙
篠青 薄青 円薄青 薄青 木蘭地
織り色目のイメージ
紙燭色 花橘 麹塵 松重

モニターの上下左右からご覧になって、色の変化をお楽しみください。


合わせ色目の異説の例

ほとんどの色目に多数の異説が存在しています。

胡曹抄
二藍 薄様色目(この中に別説多数)
葡萄 かさねのいろあひ
西三条装束抄
藻塩草
淡紅 色目秘抄
桜花 雁衣抄
濃蘇芳 四季色目
服飾管見
撫子 淡紫 藻塩草
紅梅 胡曹抄
薄色 紅梅 四季色目(この中に別説多数)
蘇芳 濃蘇芳 薄様色目
蘇芳 淡紫 色目秘抄(この中に別説多数)
紅梅 萌黄 服飾管見
竜胆 淡蘇芳 雁衣抄
蘇芳 薄様色目
かさねのいろあひ
濃縹 藻塩草
蘇芳 萌黄 色目秘抄
松重 雁衣抄
萌黄 薄様色目(この中に別説多数)
かさねのいろあひ
萌黄 赤色 色目秘抄(この中に別説多数)
物具装束抄
萌黄 濃蘇芳 服飾管見
萌黄 二藍 四季色目

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